日常シネマトぐらふ

見てくれた方の感情のどこかにシンクロ出来れば。

神戸の目力看板と監視社会 "Big Brother is watching you"

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神戸の"目力看板"が話題になっている。

違法駐輪を減らす為に人の目元の写真の看板を街中に設置している。
にらみを効かせている状態だ。効果はそこそこあったらしい。
 
しかし、街の景観を悪くしているという指摘や、
看板の不気味さに子供が泣くなどの苦情が寄せられている。
 
 
いささか行き過ぎた施策ではないか。
良い言葉がある。
 

"Big Brother is watching you"

 
「偉大な兄弟が貴方を見守っている」
という意味だが、ビッグブラザーとは?
 
 

Big Brother

ジョージ・オーウェルの小説『1984年』に登場する架空の人物だ。
作中の全体主義国家「オセアニア」に、1984年時点で君臨する独裁者。オセアニアでは、社会を支配するエリート(党内局員)が権力を維持するために国民(党外局員およびプロレ)に対して独裁権力を振るっているが、「ビッグ・ブラザー」はエリートたちの頂点にいるとされる。オセアニアの住民はテレスクリーンをはじめとする手段により、当局の完全な監視下に置かれている。住民はいたるところに貼られたポスターに描かれている「ビッグ・ブラザー」の姿とその下のスローガン「ビッグ・ブラザーがあなたを見守っている(Big Brother is watching you)」により、絶えずこのことを確認させられている。wikipediaより

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ほら!
 
 
…で終わりたいが、ブログなのでもうちょっと丁寧に。
 

相互監視社会

『1984年』の作中では社会主義国の独裁者が、自分に都合のいい監視社会を作り上げているのだ。
"あなたは見られている"という意味のポスターを使って。
 
神戸の"目力看板"の記事をみてこれを想起した。
その看板は1人の人間がこちらを見ているただの写真ではなく
その人物がこちらを見ているように
「あなたは沢山の人から見られてますよ」と想起させ、深層心理に働きかけるものだ。
 
そのような相互監視は市民の間に相互不信を生まないだろうか?
耐えず誰かに見られている状態は気持ちいいものなのか?
 
 

社会実験

市と警察が協力してやったというのもきな臭い。
兵庫県警科学捜査研究所が心理学を使って行った"社会実験"だそうだ。
1971年にアメリカで行われたスタンフォード監獄実験はどんどん暴力がエスカレートし
強制的に中止になった。これも心理学を用いた実験だ。
しかも実験を提案した心理学者はまだ続けるつもりだった。
 
神戸市民は実験台にされたのだ。
 

リテラシー

もちろん違法駐輪は無くすべきだ。
しかし目的だけに囚われて政府が手段を選ばない状態というのは恐ろしい。
違法駐輪が減ったと手放しで喜ぶのは早計だ。
"目力看板"なんてものを簡単に設置されてしまう世の中。
市民も高いレベルの政治的リテラシーを求められている。
 
この事で議論が起こったのは喜ばしい。
それはおかしいのではないかと疑問を持つことが肝要だ。
 
 
 
ここでは行き過ぎた政策相互監視社会の二つの要素について書いた。
それらをまとめて揶揄出来る言葉が
 
 
"Big Brother is watching you"
 
 
なのだ。
 
 

 

 

 

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